介護保険制度誕生の背景

どうして介護保険制度が誕生したんですか

高齢者人口の増加と社会の変化に対応するためです。

平均寿命の上昇と少子高齢化などにより、2016年の日本の高齢者人口は3,461万人と過去最多なのです。総人口に占める割合は約27%でつまり日本人の4人に1人強が高齢者なのです。高齢者人口の増加は今後も続き、高齢者人口比率は2020年に3割弱、2050年には4割になるとされています。

 一方で、都市部を中心に子供が親の面倒を見る習慣が無くなり、老人が老人を介護する老々介護や独居の高齢者が増加するとされています。

 こうした状況にそれまでの介護・福祉の枠組みでは対応出来なかったため、国は2000年に介護保険制度を導入致しました。

 

介護保険は5番目の社会保険として高齢者を支えています。

介護保険は、医療保険と同様に、社会保険と呼ばれるしくみです。

 そもそも、2000年以前の老人福祉法に基づく高齢者介護は、「長年にわたって社会の進展に寄与してきた老人に対して生きがいをもてる健全で安らかな生活を保障する」という弱者救済的な考えに基づいて提供されていました。

 それに対して介護保険制度では、国民が生活する上での高齢化や介護などのリスクに備えて強制的に保険加入させて、リスクが発生した時点で、保険加入者に対してサービスを提供したり、現金を給付したりします。つまり介護が必要になった時に、保険給付が行われてサービスが提供されます。

 

介護保険制度の誕生で何が変わりましたか

高齢者に対する介護サービスを1本化しました。

介護保険制度が始まる前からも、公共性の高い高齢者に対する介護サービスは提供されていました。社会福祉法人や自治体は、老人福祉法に基づいてデイサービスセンターや特別養護老人ホームといった福祉施設を運営し医療法人は医療保険などに基づいて、病状の安定した老人を老人病院などで受け入れしていました。

 しかし医療と介護・福祉の縦割りでバラバラにサービスが提供されていた為、サービス利用時の負担に公平性が生じ、医療サービスの不適切な利用も発生しておりました。

そこで介護保険制度を誕生させて、高齢者に対する介護・福祉と医療のサービスを一体的に提供することにしたのです。

 

民間企業もサービスを提供するようになりました。

介護保険制度の誕生で大きく変化したのは、民間企業やNPOも介護サービスを提供出来るようになったことです。

2000年以降、民間企業が多く参入したことで、日本において介護サービスはより身近な存在になりました。

 但し民間企業によるサービス提供が認められた後も、自治体が指定介護サービス事業者(介護保険給付対象事業者)を指定することで、事業者の質を担保し、厚生労働省が介護サービスの種類と範囲、要介護度に応じた利用限度額を決めることで、サービスの提供が過度になりすぎないように調整しています。

 

介護保険制度を導入した目的はなんですか

利用者が自らサービスを選択できるようにする事です。

介護保険制度が導入される前、高齢者への介護サービスは措置制度と呼ばれる仕組みで提供されていました。

措置制度では、サービスの利用を申し込みした希望者に対して、市町村などの諸地権者が必要性を判断し、提供するサービスの種類や提供施設をを決め、社会福祉施設に入所させたり、サービスを提供したりします。そのため利用者はサービスや施設などを自分で選択する事が出来ませんでした。

 このように措置制度では利用者の意向が尊重されにくい事から、介護保険制度では契約制度(利用制度)でサービスが提供されるようになっています。

 

介護サービスの世界にも競争原理が持ち込まれました。

措置制度でサービスを提供するのは市町村が運営する施設や委託した施設なので民間企業のような競争原理が働かず、サービスの質が向上しにくい環境になっておりました。

 一方、介護保険の契約制度では、サービスの利用にあたり、利用者が指定介護サービス事業者を選び、選ばれた事業者が利用者にサービスを提供します。その結果、利用者は自らの選択に基づいてサービスを利用出来る様になりました。つまり民間企業の参入により選択肢が増えた事で、介護業界にも競争原理が働くようになったのです。